メタバースを追い風に急成長、仮想空間SNS「Metavarse Z」が資金調達

欧米のZ世代向けに多様なコミュニケーション空間を提供するSNSアプリ「Metaverse Z」を開発した「極世網絡科技(Jishi Wangluo)」が、エンジェルラウンドとプレシリーズAで1000万ドル(約11億円)を調達した。プレシリーズAのリード・インベスターは「和玉資本(MSA Capital)」「創新工場(Sinovation Ventures)」、エンジェルラウンドは「青鋭創投(Edge Ventures)」が務めた。
Z世代とは1990年代終わりから2010年代前半に生まれたデジタルネイティブの世代を指し、2019年時点の世界人口に占める割合は32%だった。米シンクタンクのピュー研究所が2018年に行った調査によると、米国の13~17歳のうち95%がスマホを使い、97%が少なくとも一つのオンラインプラットフォームを利用している。
米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、Z世代は多様な自己表現を求め、オンラインを含むコミュニティへの帰属意識が高く、会話やコミュニケーションを重視するのが特徴。Z世代の66%がコミュニティは所得や学歴ではなく、共通の目標や関心をベースに形成されるべきだと考えている。
Metaverse Zは、Z世代のソーシャルネットワーキング、オンラインアイデンティティ、コミュニケーションに対するニーズを満たすアプリだ。ユーザーはオンラインアイデンティティの確立、レコメンデーションを通じた友人とのマッチング、趣味サークルの作成と参加、イベントやパーティーの立ち上げと参加、リアルタイムのボイスチャットなどができる。
創業者の王崟CEOによると、こうしたオンライン上のライフスタイルを可能とするのが仮想空間「メタバース」だという。なお、Metaverse Zは「Project Z」から改称された新たなプロダクト名だ。
Metaverse Zは主に北米、欧州、南米のユーザーをターゲットとしている。米国ではZ世代のソーシャルアプリ利用率がInstagramは72%、Snapchatは69%、Facebookは51%となっている。だが王CEOによると、ユーザーは一つのアプリだけを使うわけではない上、これらのアプリはリリースから10年以上が経っているため、オープンマインドで新しもの好きな北米のユーザーには目新しいプロダクトが不足しているという。
また、ゲーム用コミュニケーションツール「Discord」や音声SNS「Clubhouse」はツールの要素が強くソーシャル性が弱いほか、一般ユーザーの利用率が低いため若者のニーズを十分に満たせていない。一方のMetaverse Zは、オンラインパーティーや趣味サークルなどの機能を通じてオフラインのコミュニケーションを再現し、さまざまなインタラクションの体験を提供する。
今のところMetaverse Zのユーザーは「ACG(アニメ、コミック、ゲーム)」の愛好者が中心となっているが、ACGはまだサブカルチャーに属し、社会的な受容性が相対的に低い。王CEOは当初、このユーザー層のニーズがあまり着目されていないことから、市場を開拓する余地があると考えた。
まずはACGの愛好者が似たような趣味を持つ友だちを探す場を提供してユーザー基盤を築き、将来的には口コミや業務提携などを通じて他の分野へ拡張していく方針だ。当面は広告を収益源とし、いずれは投げ銭やバーチャルグッズなどの導入を計画している。
現在のデイリーアクティブユーザー(DAU)は10万人を超え、平均利用時間は1日当たり約60分、ボイスチャットの利用時間は約20分だ。ボイスチャットは将来的にソーシャルプラットフォームのインフラ的な存在になると期待されている。
従業員は現在約50人で、マイクロソフト、バイドゥ(百度)、アリババなどの勤務経験者もいる。王CEOは以前、創業者として5000万人以上のユーザーを抱えるソーシャルアプリの開発に携わった。
(翻訳・神戸三四郎)
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